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神戸地方裁判所 平成10年(ワ)2523号 判決

原告

竹内貞子

被告

合資会社原田パン

ほか一名

主文

一  被告らは原告に対し、各自、金四一〇万二六八一円及びこれに対する平成九年五月二七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用はこれを五分し、その二を原告の、その余を被告らの各負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告らは原告に対し、各自、七一七万七二三一円及びこれに対する平成九年五月二七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告大谷が自動車を運転中に左バックミラーを原告の後頭部付近に衝突させた交通事故に関し、原告が被告大谷に対し、民法七〇九条に基づき、被告会社に対し、自動車損害賠償保障法(以下、自賠法という。)三条、民法七一五条に基づき、原告の被った損害の賠償を求める事案である。

一  前提事実(争いがないか、後掲証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)

1  交通事故の発生(次の交通事故を以下、本件事故という。)

(一) 日時 平成九年五月二七日午前七時一〇分頃

(二) 場所 神戸市北区山田町上谷上字岡田四番一号先(県道神戸三田線、以下、本件事故現場という。)

(三) 加害車 被告大谷運転、被告会社保有の普通貨物自動車(神戸四六ち九二三一、以下、被告車という。)

(四) 被害者 原告

(五) 事故態様 原告が本件事故現場付近の県道神戸三田線(以下、本件道路という。)の南側の路側帯の白線内を東から西に向かって歩行中、原告の後方から西に向かって走行してきた被告車が同車左バックミラーを原告の後頭部に衝突させた。

2  原告の受傷

原告は、本件事故により、頭部打撲、頸部捻挫、左手打撲等の傷害(以下、本件傷害という。)を負い、次のとおり通院治療を受けた。

(一) 有本整形外科

平成九年五月二七日から平成一〇年二月二八日まで(但し、実通院日数は一八七日である。)

(二) 村田整形外科(甲一二、四二、四三)

平成一〇年二月六日から平成一一年三月三〇日まで(但し、実通院日数は二二八日である。)

本件傷害は、村田整形外科の村田弘文医師により平成一一年三月三〇日、症状固定と診断された。

3  被告らの責任原因

(一) 被告会社

被告会社は、被告車の保有者として、自賠法三条により、本件事故により原告が被った損害(人身損害)を賠償する義務がある。

また、被告会社は、被告大谷の使用者として、被告大谷の業務執行中の不法行為について、民法七一五条により、本件事故により原告が被った損害(物損を含む)を賠償する義務がある。

(二) 被告大谷

被告大谷は、前方注視義務、安全確認義務があるのにこれを怠り、漫然と進行して、被告車バックミラーを原告の後頭部に衝突させたのであるから、民法七〇九条により、本件事故により原告が被った損害(物損を含む)を賠償する義務がある。

4  原告の損害

原告は、本件傷害の治療費として、一五九万七二一六円を負担した。

5  損益相殺

原告は、本件事故に関し、右4の一五九万七二一六円及び六五万八四八〇円の合計二二五万五六九六円の支払を受けた。

二  争点

1  過失相殺の要否とその程度(以下、争点1という。)

2  右点に関する当事者の主張の要旨

(一) 原告

以下の本件事故態様に照らすと、原告には過失相殺をすべき程の過失はない。

(1) 原告は、本件事故当時、本件道路の白線内(路側帯内)を歩行していた。

(2) 白線を越えた車両の通行は禁止されており、白線は車道と歩道を区分するため引かれているから、歩行者が白線内を通行することは禁止されていない。

(3) 白線内の幅員は〇・七メートルあり、しかも西行車線の幅員も三・四メートルと車両の通行にはかなりの余裕があるため、白線内の通行が危険であるとは考え難い。

(4) 西行車線の幅員は右のとおりであり、車両運転者は白線寄りに進行する必要はない。

(5) 近隣住民の多くは、白線内を歩行している。

(6) 以上の状況から考えて、原告は、後方から車両が衝突してくることを予想できなかった。

(二) 被告ら

(1) 本件道路南側には歩道はなく、その北側に設置されている。本件道路南側の崖下は川であるため、ガードレールが設置され、ガードレールから〇・六メートル北側に白線が引かれている。

(2) そして、本件事故現場の東側には横断歩道が設置されているため、本件事故現場付近の道路状況では、原告は一旦横断歩道で本件道路を南から北へ渡り、北側に設置された歩道を歩くのが安全な方策であったにもかかわらず、原告は敢えて右のとおり危険な歩行をする以上、原告としては常に後方から進行してくる車両に十分注意をすべきであったにもかかわらず、漫然と西に向かって歩行したもので、相応の過失相殺がなされるのが相当である。

3  原告の損害額は幾らか(以下、争点2という。)

4  右点に関する当事者の主張の要旨

(一) 原告(なお、原告の損害額の計算過程を分かりやすくするために、前提事実4の原告の損害及び前提事実5の損益相殺も含めて主張する。)

(1) 治療費 一五九万七二一六円

(2) 通院交通費 六一万〇一二〇円

日額二三二〇円(電車賃等)の割合によるもの。なお、原告は、通院交通費として、被告らより合計四四万五四〇〇円を受領しているが、平成一〇年五月一日から同年九月三〇日までの間の実通院日数七一日分についての一六万四七二〇円は未払いである。

(3) 休業損害 三三三万七五一一円

原告は、長男一家(長男正博、その妻幸子、その子伸介、孝幸)と同居しているが、長男の妻幸子も共働きのため、原告が右家族の身の回りの世話や家事一切を行っている。

また、そのかたわらにビル清掃のパートにも行っていた。

よって、主婦の最低賃金年収二九七万一二〇〇円(平成八年賃金センサス産業計・企業規模計・女子労働者六五歳以上)を基準として、家事に従事できなかった本件事故当日から平成一〇年四月三〇日までの三三九日間について全休として二七五万九五五二円及び症状が若干軽快した同年五月一日から同年九月三〇日までの実通院日数七一日について、右賃金センサスに基づいて算定した五七万七九五九円の合計三三三万七五一一円が原告の休業損害となる。

(4) 慰謝料 三〇〇万円

原告は、本件傷害が完治せず、後頭部から右頸部にかけて疼痛、頭痛があり、耳鳴り、左右手指の麻痺、しびれ、脱力感等の後遺症に悩まされ、家事も思うに任せない日々を送っているところ、前記通院の実態と右後遺症に照らすと、本件事故による慰謝料は三〇〇万円とするのが相当である。

(5) 物損(腕時計) 二万五〇〇〇円

(6) 弁護士費用 六五万円

(7) 以上合計 九二一万九八四七円

(8) 損益相殺による修正

そこで、右の九二一万九八四七円より前掲事実5の損益相殺額(二二五万五六九六円)を差し引くと、原告の損害は六九六万四一五一円となる。(なお、原告の最終的な損害額の主張は、右のとおりであるが、請求を明示的に減縮していないので、請求額と右損害額に齟齬が生じる結果となった。)

(二) 被告ら

(1) 通院交通費について

原告は、治療相当期間として、平成一〇年九月末日までと主張するが、村田整形外科において、治療は中止、症状固定の診断を受けた平成一〇年五月一一日までというべきである。

平成一〇年五月以降はほぼカレンダーどおりに出勤しているという就労状況をみても、その頃症状は固定し、通常の生活に復帰していたと考えるべきである。そして、原告は、就労したその後に病院に通うことが多く、この際には通院費は発生していない。よって、原告が就業することなく通院した六〇日分の交通費のみを通院交通費と認定すべきである。

(2) 休業損害

原告は、長男一家とは別居しており、長男一家の身の回りの世話や家事一切を行っているとの主張は争う。

右のとおり、原告は、平成一〇年五月以降、通常生活に復帰したと考えるべきである。

さらに、治療期間内といえども、原告は、神戸市北区花山東町から電車を乗り継いで明石市内まで一時間余りかけてほぼ毎日仕事と通院のため通っていることに照らすと、本件傷害は、到底労働に支障を及ぼすような程度のものとはいえない。

第三争点に対する判断

一  争点1(過失相殺の要否とその程度)について

1  事実認定

前提事実1と、証拠(甲四四の1、2、五四ないし五九、六〇の1、2、六二ないし六四、乙一、二及び原告本人)並びに弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない{なお、甲五四(起訴状)、五八(原告の検察官に対する供述調書)中の原告が本件事故当時「外側線上を歩いていた」との記載及び供述記載の意味は、甲六二(被告大谷の検察官に対する供述調書)中の外側線の幅は約〇・七メートルであるとの供述記載と照らし合わせると、「外側線の外側を歩いていた」、即ち、「路側帯内を歩いていた」との趣旨であると認められる。}。

(一) 原告は、本件事故当時、本件事故現場付近の本件道路の南側の路側帯内(白色の外側線の外側)を東から西に向かって歩行中、原告の後方から西に向かって走行してきた被告車が同車左バックミラーを原告の後頭部に衝突させたので、その衝撃により原告は左手首付近をガードレールに打ち当て、原告の腕時計が壊れた。

(二) 本件事故直前、被告大谷は、本件道路の渋滞のため、被告車を時速約五キロメートルの速度で前進させたり、停車させたりしていたところ、原告との距離が約一・九メートルに迫った地点で、右渋滞のため停車していた被告大谷は左前方を自分と同方向に歩行中の原告を認めた。

(三) 被告大谷は、本件事故当時、対向車に気を取られ、原告との間隔を十分に取らないで、むしろ車道の左側、即ち、白色の外側線ぎりぎりに寄って被告車を進行させたので、被告車の車体から約三〇センチメートル左側に突き出ている左バックミラーを原告の後頭部に衝突させた。

(四) ところで、本件道路の西行車線の幅員は約三・四メートルあり、原告の歩行していた路側帯の幅員は約〇・六メートルあった。

(五) また、本件事故現場の三〇ないし四〇メートル東に信号機の設置された横断歩道があり、かつ、本件道路の北側には車道より一段高くなっている歩道があったところ、原告はかつて肩書地の自宅から明石市内のパート先に出かける場合など右横断歩道を経由して本件道路の北側にある歩道を歩行していたが、本件事故当時は近隣の人々の中には右歩道を通らず、前記路側帯を歩行する人もあったことから、原告も前記路側帯を歩行していた。

2  判断

以上の事実により、次のとおり判断する。

(一) 被告大谷の過失

被告大谷は、前方注視義務、安全確認義務があるのにこれを怠り、対向車に気を取られ、原告の動向に注意を払わず原告との間隔を十分に取らなかった過失及び被告車の左バックミラーは車体から約三〇センチメートル左側に突き出ているのであるから、被告車を白色の外側線ぎりぎりに寄せてはいけないのに、漫然と進行して被告車を白色の外側線ぎりぎりに寄せた過失があり、右各過失により本件事故を発生させたのであるから、同被告の過失は重大である。

(二) 原告の過失

原告は、本件道路北側の歩道ではなく、前記路側帯内を歩行したが、この点に落ち度がなかったか否か検討する。

(1) 前記路側帯は、道路交通法二条一項三号の四にいう「路側帯」である。

(2) そして、道路交通法一〇条によると、歩道又は「歩行者の通行に十分な幅員を有する路側帯」(以下、歩道等という。)がある場合、原則として歩道等を通行しなければならない。ところで、「歩行者の通行に十分な幅員」とは、一メートル以上のものをいうと解されるが、その長さに満たなくとも、その路側帯を歩行している場合には、実務上同様の取り扱いがなされることが多いと思われる。

そうすると、原告に落ち度がなかったという余地もあるとは思われるが、本件では、原告はかつて前記歩道を通行していたのであり、前記路側帯はその幅員が約〇・六メートルしかなく、甲四四の1、2によると、本件事故当時前記路側帯を歩行していた原告の右肩付近は車道に一部出ている可能性があり、しかも原告は後続車と同方向に進行するのであるから、後続車の動向を十分に観察できないことを総合考慮すると、原告はこのような危険を孕む前記路側帯ではなく、前記本件道路北側の歩道を歩行すべきであり、原告にも幾分かの過失があったものといわざるを得ない。

(三) 以上の諸事情によると、原告、被告大谷双方の過失が相俟って本件事故が発生したものというべきであり、本件事故における双方の過失割合は、原告において五分、被告大谷において九割五分とみるのが相当である。

二  争点2(原告の損害額は幾らか)について(なお、原告の損害額の計算過程を分かりやすくするために、前提事実4の原告の損害及び前提事実5の損益相殺も含めて認定する。)

1  治療費 一五九万七二一六円(争いがない。)

2  通院交通費 一四万六一六〇円

(一) 事実認定

前提事実2と、証拠(甲一二、一六ないし一八、四二、四三、六四、六五、乙一四ないし二八、証人竹内孝幸及び原告本人)並びに弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。

(1) 原告は、本件傷害の治療のため、次のとおり通院した。

〈1〉 有本整形外科

平成九年五月二七日から平成一〇年二月二八日まで(但し、実通院日数は一八七日である。)

〈2〉 村田整形外科(なお、原告は有本医師が死亡したため、村田整形外科に転院した。)

平成一〇年二月六日から平成一一年三月三〇日まで(但し、実通院日数は二二八日である。)

(2) 本件傷害は、村田整形外科の村田弘文医師により平成一一年三月三〇日、症状固定と診断されたところ、同医師は、平成一〇年五月二六日付の診断書(乙一四)で平成一〇年五月一一日には一旦、治療の「中止」「症状固定」欄に丸を付けたが、翌二七日付の診断書(甲一二)では、治療の「継続」欄に丸を付け、さらにその後の平成一一年四月一三日付の後遺障害診断書(甲四三)で平成一一年三月三〇日、症状固定と診断したものである。

(3) 原告の本件事故当時の住所地は、肩書地(神戸市北区花山東町)であり、本件事故当時、原告は明石市内で清掃業のパートをしていた関係で、パート勤務の際に、当初は有本整形外科に、有本医師死亡後は、村田整形外科に通院することが多く、パート勤務とは無関係に通院することは少なかった。右各病院は、共に明石市内にあり、原告の右住所地からは電車を乗り継いで一時間余りかかる。

(4) 原告がパート勤務とは無関係に通院した日数は、次のとおりである。

〈1〉 本件事故日から平成一〇年五月一一日まで 六〇日

〈2〉 平成一〇年五月一二日から平成一〇年九月三〇日まで 三日

(5) 原告住所地から明石市内までの通院交通費(往復分)は、日額二三二〇円である。

(6) 原告は、パート勤務先から交通費の支給を受けていたほか、手取りの月額パート収入は約四万円であった。

(二) 判断

(1) 以上認定の事実によると、本件傷害の症状固定日は平成一一年三月三〇日と認めるのが相当である。

(2) ところで、原告は平成一〇年九月三〇日までの通院交通費を請求するので、右同日までの通院交通費を算定することとする。

通院交通費は原告が実際にそれを負担した場合に損害と認定すべきところ、原告は大半の通院をパート勤務の際に行い、パート勤務とは無関係に通院した日数は平成一〇年九月三〇日までに六三日間に過ぎない。

(3) そうすると、原告の通院交通費は、右の日額二三二〇円に六三日間を乗じた一四万六一六〇円と認めるのが相当である。

3  休業損害 二〇五万六二三二円

(一) 事実認定

以上認定の事実と証拠(甲一、六三、六四、証人竹内孝幸及び原告本人)並びに弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。

(1) 原告は、本件事故当時、七二歳の老女であった。

(2) 原告は、本件事故当時、長男一家(長男正博、その妻幸子、その子伸介、孝幸)と同居していたが、長男の妻幸子も大丸神戸店の毛皮売場で働いていたため、幸子は家事の一部しか担当できず、五人家族の家事は主に原告の担当であった。

(3) 原告は、本件事故当時、健康維持と小遣い稼ぎのため、朝から昼頃まで明石市内でビル清掃のパート勤務をしていたが、手取りの月額パート収入は約四万円であった。

(4) 原告は、本件事故後も無理をして、パート勤務を続けたため、平成一〇年九月三〇日までにパート勤務を欠勤したのは、六三日間に過ぎなかった。

(5) 原告は、本件事故後は家事が従前程できなくなり、またパート勤務を欠勤することもあったので、平成一一年七月三〇日付でパート先から解雇された。

(二) 判断

(1) 以上認定の事実によると、原告の休業損害の算定に当たっては家事従事者(いわゆる主婦)と同視すべきであり、(月収の月額約四万円は原告の労働能力の一部しか評価しておらず、低額に過ぎるからである。)また、原告の年齢、家事の全部を担当していたわけではないことに照らして、一定割合を減ずることとする。

(2) そして、休業損害の算定期間としては、原告主張の平成一〇年九月三〇日までとするが、前認定のとおり平成一〇年五月一一日には担当医師から治療の「中止」「症状固定」と診断されており、その頃には症状が大分軽快していたものと認められるから、平成一〇年五月一一日の前後で労働能力喪失割合を区別することとする。

(3) また、原告は、無理をしていたとはいえ(なお、この点は慰謝料で評価することとする。)、一時間余りをかけて頻繁に明石市内まで通勤、通院しており、本件事故後家事が全くできない状態であったとは評価できない。

(4) 具体的算定

以上の諸事情を総合勘案の上、次のとおり原告の休業損害を算定する。

〈1〉 本件事故日から平成一〇年五月一一日までの分

ア 主婦の年収二九七万一二〇〇円(平成八年賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計の女子労働者・六五歳以上)の六割に当たる一七八万二七二〇円を基礎とすべき年収とみるのが相当である。

イ 本件事故当日から平成一〇年五月一一日までは三五〇日間である。

ウ そうすると、原告の右期間の休業損害は、次のとおり一七〇万九四五七円となる。

一七八万二七二〇円×三五〇日÷三六五日=一七〇万九四五七円(円未満切捨)

〈2〉 平成一〇年五月一二日から同年九月三〇日までの分

ア 主婦の年収二九七万一二〇〇円(平成八年賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計の女子労働者・六五歳以上)の三割に当たる八九万一二六〇円を基礎とすべき年収とみるのが相当である。

イ 平成一〇年五月一二日から同年九月三〇日までは一四二日間である。

ウ そうすると、原告の右期間の休業損害は、次のとおり三四万六七七五円となる。

八九万一三六〇円×一四二日÷三六五日=三四万六七七五円(円未満切捨)

〈3〉 合計

右〈2〉、〈3〉の合計は二〇五万六二三二円である。

4  慰謝料 二五〇万円

前認定の原告の通院の実態、その他本件に現れた一切の諸事情を総合考慮すると、原告の慰謝料は二五〇万円と認めるのが相当である。

5  物損(腕時計) 二万五〇〇〇円

(一) 争点1で認定したとおり、原告は本件事故の衝撃により左手首付近をガードレールに打ち当て、原告の腕時計が壊れた。

(二) 弁論の全趣旨によると、原告は右腕時計の損壊により二万五〇〇〇円の損害を受けたものと認められる。

6  以上合計は、六三二万四六〇八円となる。

7  過失相殺による修正 六〇〇万八三七七円

右6の六三二万四六〇八円に前認定の被告大谷の過失割合である九割五分を乗じると、六〇〇万八三七七円(円未満切捨)となる。

8  損益相殺による修正 三七五万二六八一円

右の六〇〇万八三七七円より前提事実5の損益相殺額(二二五万五六九六円)を差し引くと、三七五万二六八一円となる。

9  弁護士費用相当額の加算 三五万円

原告が原告訴訟代理人弁護士らに本件訴訟の提起、遂行を委任したことは当裁判所に明らかであるところ、本件訴訟の難易度、右の認容額その他本件に現れた一切の諸事情を合わせ考えると、被告ら各自に負担させるべき弁護士費用相当の損害は三五万円と認めるのが相当である。

10  まとめ

そうすると、原告の損害の総合計は、右の三七五万二六八一円に三五万円を加算した四一〇万二六八一円となる。

三  結論

以上の次第で、原告の本件請求は被告らに対し、各自、右の四一〇万二六八一円及びこれに対する本件事故日である平成九年五月二七日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、この限度で認容し、その余の請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとする。

(裁判官 片岡勝行)

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